バーチャルレガッタ講座

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チームレース入門

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 海外では幼少・学生時代から活発に行われているマッチレースやチームレースですが、日本国内ではまだまだ普及しているとは言い難いです。
 チームレースは、フリートレースの基本的な知識や技術に加えて、より戦略的な対艇判断力、シビアなルール解釈、そして急旋回・急停止のボートコントロールが求められますので、これを練習することは自分達のセーリングが「もっと強くなる」ことに確実に寄与します。
 バーチャルであれば、気軽に仲間と集まって、艇色も揃えてチームレースを行いやすいので、ぜひ皆さん挑戦してみましょう。

チームレースはどこで練習する?

部活内で仲間とやってみる

メリット:初心者同士でも手探りで、またリアルでも体験しやすい。
デメリット:指導者がいないと上達しにくい。間違った知識を覚える。

リアル・バーチャルに関わらず、部内の練習にぜひチームレースを取り入れてみましょう。フリートレースにも役立つ知見と操艇技術が得られるはずです。

日本VRIクラブで練習を求める

メリット:日本語でコミュニケーションを取れるので上達が早い。
デメリット:メンバーと時間帯を合わせる必要がある。

日本VRIクラブのDiscordサーバには、チームレース専用のチャンネル(#チームレーサーズ)と、チーム抽選用のBot( =tr で使い方を表示)があります。どこかに「チームレースを初体験してみたい」と書き込めば、喜んで教えてくれる人が登場してきます。

日本VRIクラブでは、日常的にチームレース練習が行われています。

カスタムのオープンチームレースに参加

メリット:レースが立っていれば最も気軽に参加できる。
デメリット:オープン参加にはVIPが必要。良い勝負になりにくい。

VIP会員であればカスタムのオープン・チームレースに、飛び入り参加できます。気軽に、後腐れもなく参加できますが、見知らぬ人同士でのチームなのでレベル差があり、僅差での競り合いになることは少ないです。

VIPであれば、オープン(コード無し)のチームレースモードに参加できる

なお、VIP会員でなくてもクローズ(コード有)のチームレースモードには参加できますが、下記の手順が必要です。

非VIP会員でも、クローズ(コード有り)のチームレースには参加できる
チームレースモードは艇色選択とリアルタイムの点数計算が自動です。

TRL(Team Race League)で修行する

メリット:24時間、最もマッチングしやすい・ハイレベルなレースが可能。
デメリット:世界最高レベルの選手もいるので全く歯が立たないことも。

TRLは、バーチャルレガッタにおける世界最大・最高峰のチームレース専門コミュニティです。昼夜を問わず頻繁に「TRL」というカスタムレースが開かれているのを目にしている方も多いのではないでしょうか。

世界のトップ選手たちも毎日のように参加しており、基本的に誰でも、参加したい時に参加したいだけフリー参加できます。とりあえず公式サイトからDiscordサーバに入って、参加ルールや雰囲気を見て、1~2レースやってみることから始めましょう。

昨年のeSWC世界選手権優勝のJoan Cardonaや、現在世界ランキング1位のVIT Farleyも日常的に遊んでいるTRL。

艇数別の勝敗と戦略の基礎

共通ルール

チームレースの勝敗は艇数に関わらず、以下のルールで決定します。

・順位点の合計が少ないチームが勝ち。
  → 3vs3の例:1+4+6位(11点・負け)⇔ 2+3+5位(10点・勝ち)
・同点の場合のみ、1位艇を出した方が負け
  → 4vs4の例:1+3+6+8・8位(18点) ⇔2+4+5+7位(18点)
   同点で前者の負け

順位の組み合わせを「コンボ」と言います。レース中に変化するコンボの状態で、取るべき戦略が変わります。

2vs2のコンボと基本戦略

2vs2の合計順位点は10点で、コンボは6パターンです。

2vs2の場合、前述の共通ルールは、単純に「4位艇を出した方が負け」と同義です。

上記のコンボ表は、敵・味方チーム各々の視点に分けると以下の3パターンのみです。

3vs3のコンボと基本戦略

3vs3の合計順位点は21点で、コンボは20パターンです。

上記コンボ表は以下の4パターンに言い換えることができます。

①勝ち確定:1+2位または1+3位を取れば、3番艇の順位関わらず勝ち。
②やや有利:2+3位を取っていれば、3番艇が最下位にならなければ勝ち。
③やや不利:下2艇が4+5位だと、1番艇がトップを取らないと負け。
④負け確定:4+6位または5+6位に落ちると、1番艇に関わらず負け。

さらに上記は、敵または味方が以下2つのうち、いずれかの状態になります。(1+2+3位 vs 4+5+6位の完全試合を除く)

4vs4以上の基本戦略

4vs4以上になると、組合せ(combination)が桁違いに増えて、また全艇順位を把握したり計算するには艇数も多いため、上記のようなパターン別で判断することは、徐々に困難になります。

4vs4のコンボ 70パターン(別ウィンドで開きます)

対戦艇数コンボ数順位点合計決勝点
2 vs 26パターン10点5点 vs 5点
3 vs 320パターン21点10点 vs 11点
4 vs 470パターン36点18点 vs 18点
5 vs 5252パターン55点27点 vs 28点
7 vs 73,432パターン105点52点 vs 53点
10 vs 10184,756パターン210点105点 vs 105点

(参考: チームレースの数式、N vs N艇の場合)
 順位の組み合わせ(コンボ)数  =Combin(2N,N)
 順位点の総計(半数以下で勝利) =N(2N+1)

このように4vs4以上の多艇チームレースでは、全艇を把握したパターン判断が困難ですので、暗算できる場合は、決勝点を超えているか否かを計算しながら、フリートレースに近い「Go fast」の戦術を取り、「先行艇との差が開かない範囲で、味方艇の邪魔をせず、敵艇だけをカバーする」「目の前の1艇を抜かす/抜かさせない」で+1点(2点差)を稼ぎ出すことが中心になります。

1位を回避する必要は無い

なお「同点の場合は、1位艇を出した方が負け」ですが、これは「1位は回避しなくてはいけない」という意味では決してありません。「1位を死守したにも関わらず、下位の仲間が落ち過ぎて/置き去りにして、同点まで落ちたら負け。」という意味合いです。

4vs4や10vs10において、1位艇のフィニッシュ時点、つまり下位の順位が不確定な段階で、同点になる/ならないを判断することは不可能です。低い同点リスクを考慮して1位を譲る(2点差)必要はなく、遠慮なくトップフィニッシュして確かな+1点(2点差)を稼ぎましょう。

仮に1位を取って同点負けの場合・・・
 (1+4+5+8位=18点 vs 敵2+3+6+7位=18点→同点で負け)
1位を敵艇に譲っても、余計に負け。
 (2+4+5+8位=19点 vs 敵1+3+6+7=17点→2点差負け)

仮に1位を譲って同点勝ちした場合・・・
 (2+3+6+7点=18点 vs 敵1+4+5+8位=18点→同点で勝ち)
1位を敵艇に譲らなければ、余裕で勝てている。
 (1+3+6+7点=17点 vs 敵2+4+5+8位=19点→2点差勝ち)

チームレースの個別戦術

攻撃の原則

・勝っている時は逃げろ(走れ)、負けている時は攻撃(止まれ)

・無思慮な攻撃、攻撃のため攻撃、衝動的な攻撃、自分の順位を省みない攻撃は悪い結果しか生みません。確実に自分の順位を守りながら、相手にペナを与えられる、良いコンボに繋がる攻撃のみを計画的に行いましょう。

・わからなければスピード、艇速とゲインはチームレースにおいても最大の武器です。

・味方とのコミュニケーションは、多ければ多いほど良いです。ボイスチャットを使う場合は「タックします」「左海面を目指しています」「マーク内側に入って/入れて」「下り先行艇を挟みましょう」など、なるべく多く声掛けします。VRI上のチャットを使う場合は以下の合図を使うのが、TRL発祥の慣習です。
 「Hello/こんにちは」→「助けて、何かしら対処して下さい」
 「Have a good race/良いレースを」→「Go fast、私に構わず最速で走れ」

以下に紹介する攻撃手法は、いずれもチームレース専用のものであり、通常のフリートレースにおいてこれらの行為をおこなうことは著しいマナー違反・海賊行為と見なされています。

 

パス・バック / pass back

2vs2や3vs3チームレースの基本的なムーブの一つで、例えば自分が2位のとき、3位の敵艇をタイトカバーまたは足止めするなどして、4位の味方が3位敵艇を抜かす手助けをします。

4vs4以上の多艇チームレースの場合は、先行艇との差は開き、後続艇に抜かされるリスクは上がり、結果的に自分の最終順位が下がる可能性が増えますので、やり過ぎないことです。

マーク・トラップ / mark trap

マークルームに先に入った先行艇が後続艇を妨害するため、マーク近くで減速します。先行艇に有利で成功率が高い攻撃なので、負けチームの先行艇はほぼ必ず仕掛けます。

仕掛ける側のコツとしては;
・完全に止まると後続艇の回避行動に対処できないので、必ず艇速を残す
・マークから1艇幅ほど空けることで、後続艇が内側にも外側にも避けにくくなる。

回避する側のコツとしては;
・負けチームの先行艇は、ほぼ必ずマークトラップを仕掛けるはずなので、予期してオーバーセイル(大回り)したり、ゲートマークであれば反対側を回るなど対策を取る。
・外側に避けると見せかけて内側に入るなど、急旋回でマークトラップ避ける。

フッキング / hooking

こちらはフリートレースのスタート前などでも日常的に行われていますが、11条権利を取得するために、先行艇のスタン下側に、バウ先を差し込む(ひっかける)ことをフッキングと言います。

バウ・アウト / bow out

クローズで下側を並走する場合、わずかにでもバウ先が前に出ることで、上艇を上し殺すことが可能になります。逆に、バウ先が出ていない場合は、上艇を上し殺そうとする試みは、ある程度の技術があれば上艇に回避され、完全にカバーされてホープレスに落とされます。

ハイ・ロー / high-low

リーチングレグなどで、1位艇の味方が2位艇を上し殺している間に、3位艇が1位艇の下に入って抜かすムーブは、オーソドックスな動きです。

バランス / balance

主に4vs4以上の多艇チームレースのフィニッシュ時などに、左右に大きくスプリットしながら敵艇1艇ずつをカバーしている場合、左右の高さを合わせることで1+3位などが1+2位になり+1点を稼ぐことができます。

スターボ攻撃(バーチャルTRのみ)

フリートレースではご法度ですし、リアルでも16条(航路権の濫用)違反ですが、「何でもアリ」のチームレースでは、ディップで避けようとしているポート艇を、スタボー艇が大きくバウダウンして当てに行くことは常に行われます。ティラーを切りながら当てるとスタボー艇が16条判定を取られることがあるので、ヒットする瞬間はティラーを離すことがコツです。

繰り返しますが、通常のフリートレースでは避けている相手に当てに行くのは、著しいマナー違反・海賊行為ですので、厳に慎んでください。

大差で1位艇asereが、上りレグでスピンを張ってUターン、スターボランニングでポートクローズの敵2艇を10条攻撃。3艇目はタックで10条を回避しようとしたが、フッキングで11条。
こちらもasereによる多彩な攻撃手法(0.25倍速での再生を推奨)

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