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スタート戦略と戦術

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フリートレースでトップを取るには、スタートでトップを取ることが4~6割ぐらいを占めます。

目 次

準備信号前にすべきことは多い

海面のブローを事前調査

ブロー(海面の濃いところ)と、その形の変化を観察しましょう。俯瞰で見たり、ズームアウトして上マーク付近の奥のどちらからブローが降りてきそうか、想像します。

もし集合艇数がまだ少なく、スタート手続きが始まるまでしばらく時間がかかりそうなら、レース海面へ実際にクローズで上ってみたり、遠くのブロー箇所も走ってみて、最小~最大の風速範囲や、ブローの振れ方、見えているブローと実際の風速のズレを観察・体感したり、濃さだけでは見えない情報を収集したりします。

見た目だけではわからない。走ってみることが大事。

艇の特性を再確認する

カウントダウンが始まる前の自由時間を利用し、艇の特性を再確認し、操艇感覚を思い出しましょう。アビームでスタートラインを流すついでに、ジェネカーを上げ下げして、何度ぐらいから張れるのか、ホイスト作業で何秒ぐらい、何ノットの失速があるかなど確認します。

クローズBestVMGを走って現在の風速で最大艇速は何ノットか、そこに到達するまで何秒か、どの程度のピンチングでどれぐらい艇速が落ちるか、ベア加速は効くのか、など再確認します。ランニングもBestVMGを走ってから、艇速計を見ながら少しラフやベアして、クローズ同様の確認をします。

またスタート前に僅かでも前に進めるラフィング限界の角度も確認します。エンドマークや本船の周囲をぐるぐる回って、旋回半径を確かめたり、スタートマニューバやマーク回航の練習をするのも良いでしょう。

これら一連の作業で、旋回速度や艇速感覚、ティラー反応など、その艇をコントロールする感覚も思い出します。

ラインの傾きを測る

ラインを流して、傾きと有利不利を計りましょう。風は刻々と振れていますので、できれば2~3往復走りながら、振れの傾向も一緒に調べます。

ライン上を綱渡りのように綺麗にまっすぐ走るのは、ボートコントロールや、スタート直前にリコールしないようアビームでラインに寄って加速する練習にもなります。

スタートラインの角度を正確に把握しよう

振れの傾向を掴む

ラインを流しながらでも、止まりながらでも良いですが、一方向にゆっくり徐々に回っている風なのか、ブローによって振れているのか、激しく振れるか、ほとんど振れないか、周期は早いか遅いか、最大何度ぐらい振れるかなど、その海面の振れの傾向なども一緒に把握します。

他艇の分布・動き・性格を予想する

青レース・緑レースでは、スタート前は他艇の名前や艇色は見えませんが、国旗や走り方、スタート前のわずかな位置取りや待ち方などで、攻撃的な艇やラフィングが上手そうで近づくべきでない艇、逆に下にスキが多そうで入りやすそうな艇など、主要な艇をチェック&マークしておきます。下イチ・上イチを争って狙う艇団など、エンドの混雑具合も予想して、ピンを取るか安全に空いたところを狙うか検討します。

30秒前にスタート計画を確定する

30秒前の風向とレース海面の濃さで、{上スタ⇔下スタ}×{右海面狙い⇔左海面狙い}という基本計画は確定させます。

20秒・10秒・5秒・2秒・1秒前のボートコントール例

20秒前:周囲の艇を予想し、ラインとの間合いを調整する

すでに30秒前に例えば「下スタ・即タックで右海面狙い」といった基本方針は決定しているので、それを実現するための位置取りに入ります。

振れと他艇を予想しながら位置取り

10秒前:上艇をいじめて下スペースを確保する

限界まで上して、上艇をイジメながら下ルームを確保します。ポートや後続からせっかく作ったルームに入られないように気を付けて下さい。

限界まで上して、下にルームを作ろう

5秒前:ベア旋回を開始する

ティラーを引いてから、旋回して加速が始まるまで数秒かかるので注意。

艇速が無いのでベアに時間がかかる

2秒前:アビームでフル加速

作った下ルームでベア加速。

1秒前:クローズへラフ旋回

アビームから1秒前ぐらいにBestVMGをタップ。30秒前に策定した「下スタ・即タック・右海面狙い」の基本計画を実現成功して、その後のレースが一気に有利になり、この時点でトップを確信することもあります。

これがキマった瞬間に、トップフィニッシュを確信することも

リコールしても接触回避し打開!

リコールすると、けたたましいホイッスルと警告表示に焦りますが、落ち着いて速やかにラインに戻りましょう。

また、それでも最下位近くまで落ちることが多いですが、決してDNFなどせず、打開の道を探りましょう。思い切って先行艇団の逆海面に突っ込んだら、神風が吹いて、十数艇をごそっと抜くのもヨットレースあるあるです。また、ダウンウィンドを最も速く走れる艇は、最下位艇です。レース後の右肩上がりの順位変動表を想像しながら楽しみましょう。諦めたらそこで試合終了です。メンタルコントロール・アンガーマネジメントは、ヨットレースでも重要です。

風向別スタートの代表的パターン

大きい右振れ:やや上スタ スターボ大将

大きい右振れの場合、誰もが上スタしたがるため、本部船周辺が大変混雑します。ペナを受けるリスクが非常に高く、上イチを取れても艇速が無いため、下先行艇の航跡に吸い込まれたり、近接している下艇がカバーされるのを嫌ってピンチング(クローズより無理に上す)してくるリスクも高いです。

それなら、少し高さを犠牲にしてでもフル加速できる空いている所から出れば、結果的に抜き出ますし、下艇団をまとめて抑えながらスターボロングを伸ばせるので、得策かもしれません。

混み過ぎた上イチはリスクで一杯。総崩れすることも。
フル加速と上有利の兼ね合いで「やや上」

小さい右振れ:本部船上し殺し上イチ即タック

小さい右振れの場合、本部船がさほど混んでいないようなら上イチを狙いに行きましょう。そのままスターボロングを伸ばしても良いですし、更なる右振れやスターボレイラインにブローが見えるなら、即タックして先に小さいポートショートを甘受してから、あとでスターボロング×ブローで、一気にトップに躍り出ましょう。

艇別の上し限界角度の把握がレースの勝敗を決める
ピンチングで下流れ(シバー時に風に少しずつ押し戻される)を利用して、運営艇左下をかすめよう

小さい左振れ:下ピンどこでタックしようかな

小さい左振れで、下ピンがさほど混雑せずに取れそうなら高さ重視で狙いましょう。ただし、そのままスターボショートを伸ばしたくはありません。賢い上艇なら順番にポートロングへタックを返してくれますが、返してくれないなら諦めてベアして上艇との距離を取りベアtoベアタックでディップしましょう。

下ピンで高さは勝つが、ポートロングへのタックが難しい

大きい左振れ:やや下スタ即タック

大きい左振れの場合、一番高い下イチを取ることよりも、やや高い空いている場所からの即タックで、誰よりも早く・高くポートロングに返すことが重要になります。混んでいる下ピン艇団の上に付けて、即タックする上ルームを作りましょう。

確実に早く高く即タック

中央ブロー重視の真ん中狙いスタート

振れよりブロー重視の49erや、10kt以下の超微風で振れもさほど大きくない時、中央海面に縦ブローやパフ花道が出来ている時があります。この場合は、上スタ・下スタに拘らず、ブローをなるべくロングで長く走れるスタート位置を逆算しましょう。

スタートの特殊戦術

高速艇のフル加速・空いている所スタート

49er・Nacra17・Formula18など、最大艇速に達するまで時間がかかる高速艇の場合は、スタート前の短時間のベアでは十分に加速できません。ラインの有利・不利などよりも、しつかりと助走をつけて、空いている所を狙って全速・ジャストスタートを重視した方が良い場合があります。

49erでフル加速・空いているところスタート by Sohei NIPPON(その後、ミスタックで死んでいますが…)
フランス代表MCES PepitoのNacra17 アビームでフル加速から、空いている場所を突いてジャストスタート

360°マニューバリングで入り直し

ヨットは後ろに移動するのと、風上に横移動するのが苦手です。

もし競り合いで前に出過ぎた場合や、先行艇の下を取るためにベアし過ぎてエンドマーク(下)レイラインより下に落ちてしまった場合は、素早く360°マニューバリングして、後ろに入り直したり、エンドマークレイラインの風上側に移動したりします。小回りが利かない艇の場合は、意外と時間がかかることがあるので注意して下さい。

エンドマークレイライン上で、Sea man ship(青艇)とKG-R(緑艇)の360°マニューバリングでの入り直し・下ピンの取り合い
 

スタート10~5秒前の大ヘッダを感知して大ベア&3秒前タック

まれにスタート10~5秒前に左に大振れが入って、スターボではラインに寄れなくなることがあります。自分が風に翻弄されている時は、全艇翻弄されていますし、その振れに気づいていない艇すらあります。

無理に大ヘッダに逆らってピンチングするのではなく、左振れ(ヘッダ)以上に大きく左旋回(ベア)させて勢いをつけ、スタート3秒前にタックするような、落ち着いた対応をしましょう。

大きい左振れ:下ピン ポートスタート

大きい左振れの場合、有利な下エンドのレイラインが非常に苦しくて入りにくいので、いっそ10~20秒前に、エンドマークの大きく左外に位置取りして、ポートアビームのフル加速から、スターボ艇の下を舐めて、空いている隙間にクローズで入る方法もあります。案外、下ピンが取れることもあり、その場合、スターボ全艇の前方を突っ切って、ほぼ1上トップが確定します。

[非推奨] 故意の不正・ペナスタート

以下はリアルセーリングと乖離したスタート方法なので、嫌悪感を持つ人も多いです。海外選手などにやられることもあるので、防衛のために知っておいた方が良いですが、クラブレースなどで実際に濫用するのは注意が必要です。また、VRI開発側も問題として認識されており、近い将来に改修で封じられる可能性が高いです。

不正エリアスタート

わざと9秒前までに不正エリア(スタートラインより風上)に入っておき、ダウンウィンドで助走をつけてジャストでスタートライン上の好きな所でUターンして、スタートと同時に9秒間ペナルティを解消する方法があります。

9秒前ペナルティスタート

同様に9秒前ぐらいに故意に権利艇やマークに接触して、ペナルティ解消時の再ペナルティは1秒だけで解消されることを利用して、他艇に重なりながら混雑している上イチ・下イチなどを取り、スタート直後に良い位置でペナルティ解消するという方法もあります。
ただしマークタッチの31条だけは「再ペナルティは1秒間だけ」が適用されず、ペナ解消直後でも9秒取られますので、知識として知っておきましょう。

不正スタートだらけの世界選手権レーザー級

リーチングスタートのコツ

F50とNacra17のリーチングスタート

F50とNacra17のみ、リーチングコース(アビームスタート)の設定があります。アビームで1マークに向かいながら、ブランケに入れたい風上艇と、権利を主張する風下艇がせめぎ合いをします。基本的に、風上でも風下でも、少しでも鼻先が前に出ている方が勝ちますが、その分、リコールのリスクは高くなります。

ラインの傾きと風向の傾きの差で、左振れ(前に回る)ほど上有利、風が右振れ(後ろに回る)ほど下有利です。「95°で第1マークを狙える場所」から助走を始めて直進することが基本です。

左振れ(前に回る)ほど上有利
右振れな(後ろに回る)ほど下有利
F50は20秒以上経過しても加速し続ける。Nacra17は4~7秒程度でフルスピード。

F50は空いている所から艇速で勝負する

F50で最高速50kt弱に迫るには90~100°を10秒以上キープする必要があります。艇の特性上、ラフやベア・シバーで急激に失速しやすく、上艇のブランケや、下艇が上してきたり、前方艇への追突回避で、思い通りにいくことは少ないです。

止むを得なくシバーする場合も、ちょんちょんとごく短時間の操作で十分に減速できます。

F50の艇別攻略ページもご参照ください。

F50アビームのブランケ範囲。3~4時方向に非常に長く伸びるが、6時方向は短い。並走する風下艇はこのブランケに入らない間合いをよく把握する必要がある。

Nacra17のリーチングは、振れでセールを選択

Nacra17のスピン境界は110°で、風向に対し90°方向のコースに対するVMC(Velocity Made Course)はジブ95°≒スピン115°がほぼ互角です。それより後ろに風が回ればスピン、前に回ればジブが有利です。

Polar Chart of VRI - N17
90°方向のコースに対するVMCはジブ95° or スピン115°

Nacra17のアビームスタート/フィニッシュにおけるセール選択とVMCは、艇種別攻略ページにも記述していますので、合わせてご参照下さい。

ジブよりスピンの方が最後は若干伸びますが、スピンアビームはティラーが効きにくいです。小回りを優先してジブを選択する場合もあります。

ジブ95°もスピン115°も、下艇からイジメられてラフしたり、極端にベアすると大きく失速します。なるべく他艇と干渉せずVMCを維持できる空いているところで、±5~10°程度の進路変更に留めて直進しましょう。F50ほどの助走は必要ではありません。

なお、フィニッシュ時のアビームに関しては、通常~右振れであれば最終マークでダウンしてジブフィニッシュですが、左振れで最後まで100~110°で走れそうな場合は、最終マークでスピンダウンせずに、張ったままフィニッシュすることもあります。

Nacra17のアビームブランケ範囲。
F50より真下方向のブランケが広く、下艇から上されにくい。上艇が有利。

前方・下からラフィングで時間調整する

風下から1~3秒早めに助走開始して、全艇より前に出ながら、ラフィングで時間調整をするという戦法があります。この場合、ラフィングで少し失速するので、スタートラインで後ろからフル加速でジャストで出られた場合は負けます。
後ろから抜かされそうな場合は、12条(クリアアスターン)などでブロックする必要があります。

上艇が勝つか下艇が勝つかは操艇次第

上記のようにアビームスタートは、グー・チョキ・パーのじゃんけんと同じで「どれが正解」というのはありません。
・ブランケに入れたい風上艇 ⇔ 11条権利を主張したい風下艇
・ブランケに入れるか12条を取りたい先行艇 ⇔ フル加速できる後続艇
相手艇の動きを見ながら、お互いに「後出しじゃんけん」をし合う勝敗関係を十分に理解し、臨機応変にボートコントールする技術が重要です。

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