バーチャルレガッタ講座

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ゼロから学ぶヨット用語

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 このサイト全体は、ヨットに関する基本的な知識はお持ちの、ヨット部1~2年生程度が対象という前提で作成していますが、中には「実際のヨットは触ったことも、見たことも無い。バーチャルレガッタで初めてヨットを体験する」という方もいらっしゃるかもしれません。
 そんな一般市民や、部活探し中の新入生の皆様にも、ぜひ「実物のヨットにも乗ってみたい」と興味を持って頂きたいヨット普及・振興の観点から、バーチャルレガッタを始める上で必要な用語と知識に絞って、ゼロからご説明します。
 一般のヨット体験会や、ヨット部の入部説明会にお越しになった際に「実物のヨットは見るのも触るのも初めてだけど、バーチャルレガッタをやったことがあります」と言うと、説明する側は「それは話が早い」と泣いて喜ぶかもしれません。

大小さまざまな「セーリング」

セーリング … ヨットは帆(セール)を使って、風のみを動力源として海上を走る船舶です。実はウィンドサーフィンも同様の原理・ルールで帆走し、オリンピックでは同じ競技種目に分類されています。ヨット・ウィンドサーフィンを総称して「セーリング」と呼んでおり、全国の競技連盟(日本セーリング連盟)を始めとして、公式な競技の場では「ヨット」という呼称はあまり用いられていません。

子ども向けセーリング紹介動画(大人にも大変判りやすくまとまっています)

 バーチャルレガッタの全12艇種では、1人乗りのディンギーと呼ばれる、船室や補助エンジンを持たない小型ヨットから、10人近くで操船するような大型レース艇までが再現されています。これら艇の大小を問わず、バーチャルレガッタやラジコンで動く模型ヨットも含め、同じ帆走原理と、同じルールブックを使って競技されています。なおレースルール入門は、別でご説明します。
 一流のヨット乗りには「どんな艇でも乗りこなす。大きかろうが小さかろうが、古かろうが新しかろうが、バーチャルだろうがラジコンだろうが、俺が乗れば速いんだ。」という矜持とプライドがあるかもしれません。

ヨットの各部呼称

以下はヨットのみならず、ゴムボート、漁船、フェリーやタンカーなどの船舶でも共通の呼称です。

バウ(bow)… 船首。

スターン(stern)… 船尾。

スターボード(starboard)…右舷。古来の船は右舷寄りの甲板(ボード)で操舵(ステア)していたことに由来。

ポート(port)… 左舷。船舶は原則として左舷側で港(ポート)に接岸し、乗降する慣習です。

余談ですが、飛行旅客機も船舶由来の用語が多く「スターボード」「ポート」という呼称を使い、港(エアポート)では左舷で乗降します。

ラダー … 方向舵。船の進行方向を変えるために、水中で向きを変える板。船尾についている。

ティラー … 車のハンドルに相当するもの。いかだや小型ヨットでは、舵と一体化している操舵棒。大型ヨットや船舶では、ティラーで直接動かすには大きな力がかかりすぎるため操舵輪ステアリングホイール)を使います。バーチャルレガッタでは、いずれも◀▶のティラーボタンだけで操作します。

以下は、ヨット独自の艤装(ぎそう・船の装備)のうち、特にバーチャルレガッタで登場する最低限の用語に限って解説します。

マスト … セールを張るための、船体中央にある支柱。

メインセール … ヨットの主たる推進力となる主帆。

ジブセール … メインセールに入る風を整え、加速させるための補助的な帆。

スピンネーカー … 追い風で走る専用の、パラシュートのような軽くて大きな帆。略してスピンとも言います。

一人乗りのヨットでは、メインセールだけの一枚帆(例:ILCA級)もあります。スピンは使う艇と使わない艇があります。

セールチェンジ … スピンを使うヨットは、風上に向かう時はジブセール、風下に向かうときはスピンネーカーに帆の張り替え作業が発生します。
セールチェンジのためにジブやスピンを降ろすことをダウン、上げることをアップまたはホイスト、と言います。

大型艇のセールチェンジ(スピンホイスト→ジブダウン)

バーチャルレガッタではセールチェンジが、ボタン1つの2~5秒で済みますが、実際のヨットでは技術と知識が必要な、大きな動作です。セールチェンジ作業中は、速く走る集中力は削がれるため、やや艇速が落ちることがバーチャルでも再現されています。

風よりも速く、空を飛ぶヨット

ヨットは「風に押される力」で走ることもありますが、主に「風を帆に流して、揚力で」走っています。飛行機が、翼に風を流して揚力を得るのと同じ原理です。翼や帆に流れる風が速くなるほど、揚力は強くなります。

また速く走れば走るほど、船の上で感じる/帆に流れる風も速くなることで、より大きな揚力を得るため、理論的には無限に加速することになります。実際には水の抵抗や角度、ヨットの構造などによるスピード限界がありますが、風力だけで走っているにも関わらず風速の倍以上の艇速が出る高性能艇もあります。

セールの揚力によって、理論的にはヨットは無限に加速する

アパレント・ウィンド(見かけの風) … 推進中のヨットは、進行方向から相対的に風を受けるため、艇上で感じる風=セールで受ける風力・風速が、海上に吹いている風とは異なります。これを見かけの風アパレントウインドと言います。自転車で向かい風で走れば、実際より強い風を感じますし、追い風で走れば、ほとんど風が吹いていないと錯覚するように、です。

走行中の艇上では、実際の風向が判りにくい

フォイリング … 最新艇では、水中翼の揚力を使って海面上を宙に浮く「フォイリング」という技術を使った艇種もあります。バーチャルレガッタではNacra17F50AC75がフォイリング艇です。水面から受ける抵抗が大幅に減少する分、当然に速くなります。

水中翼で艇が空を飛ぶ「フォイリング」の模式図
Nacra17のフォイリング
バーチャルレガッタのNacra17は16~17ktでフォイリングする

風速と艇速の目安

風速や艇速はknot(ノット)という単位で表記します。1kt=1.85km/hです。海上での体感速度は、視線と海面が近いことと、波の凹凸上を走ることから、陸上時速の3倍ぐらいを感じると言われます。
同じ自動車の時速50kmでも、高速道路でバスに乗っていれば遅く感じますし、未舗装の荒地を小さいゴーカートで走れば、とても激しく感じるでしょう。

knot時速風速の目安艇速の目安
5kt9km/h微風。
木の葉がさざめく。
駆け足する程度のスピード感
10kt18km/h弱風。
旗がなびきだす。
原付バイクぐらいの体感速度。
初心者は恐怖を感じ始める。
20kt37km/h中風。
砂埃や波頭が出る。
高速道路の自動車ぐらいの
体感速度。
30kt55km/h強風。
傘が壊れる。
全速のパワーボード並み。
ヘルメットが必要。
50kt90km/h暴風・台風
人家に損害が起きる。
世界最速級のヨット。
体感速度200km/h以上
風速20ktで艇速50ktに迫る、海のF1ことSailGPのF50艇

ヨットの進路の呼び名

ヨットは風向に対して進む方向によって、それぞれ走り方や艇速に特徴があり、走り方に呼び名が付いています。以下の角度/艇速の関係図をポーラー・ダイアグラムと言います。

風向に対して進む角度で艇速が変わる。(ポーラーダイアグラム)

クローズホールド … 風上に向かう時、最も高さを稼げる走り方です。略して「クローズ」と言われることが多いが、正確には「close-hauld/クローホールド」がルールブック上は正しい。

リーチング … クローズほど風上には登れませんが加速します。

アビーム … 風を真横から受けて走ります。

クォーター・リー … ランニングよりも横風が増えるように角度をつけて加速します。

ランニング … 風下に向かう時、最も落とせる走り方です。

デッドラン … 真風下に向かうと、アパレントウィンドがゼロに近づき、帆に風が流れなくなり帆の揚力を失うので、大きく失速します。

シバー … ヨットにはブレーキがありません。艇速を落としたり、停船したいときは、帆を緩めて風を逃がすことによって、推進力を捨て、徐々に艇速が落ちるのを待つしかありません。

Best VMG … 艇速のうち、高さ(風に対して直上または直下に向かう)速度をVMG(Velocity Made Good)と言います。クローズまたはランニングで最も高さを稼げる(風下に落とせる)角度を、Best VMGと呼びます。

角度とスピードのバランスから、BestVMGで走るのが基本

ラフ(ラフィング)… 風上に進路変更すること。クローズでは失速し、ランニングでは加速することが多い。

ベア(ベアリングアウェイ)… 風下に進路変更すること。ラフの逆。

クローズ時のラフ&ベアの使途
ランニング時のラフ&ベアの使途

スターボード … 船の部位で右舷のことを「スターボード」と言いましたが、右舷から風を受けて、風上に向かって右海面から左海面に向かう走り方も「スターボード」と言います。

ポート … 同様にスターボードの逆です。

タック … クローズから真風上を向いてから逆のクローズに進路変更することをタッキング、またはタックと言います。

ジャイブ … ランニングから真風下を向いてから逆のクローズに進路変更することをジャイビングまたはジャイブと言います

タックとジャイブ
まとめ:ただの単純な折り返しUターンに見えて、中の人は大忙し
 

レースコースに関する名称

本部艇(運営艇)… スタートライン・フィニッシュラインの右端としてアンカー(いかり)を投錨して固定されています。リアルレースでは、レース運営をする担当者(レースオフィサー)が乗っており、審判・記録係や、号砲・旗などの合図が全てここから発信されます。スタート時のリコール(フライングのこと)や、フィニッシュ順位を、ラインの端から見通して判定したりもします。

マーク … スタート/フィニッシュラインの端や、レースコースの折り返し点に設置される、アンカー(碇)で固定された大型のブイ(浮き)のことです。黄色やオレンジなどの見える色で俵型が一般的です。風上/風下の折り返し地点を上(かみ)マーク下(しも)マークと言います。上マーク横のすぐ近くに打たれているマークは、オフセットマークと言って、上マークに向かうクローズ艇と、上マーク回航後のランニング艇が交錯する事故を減らすためのものです。下マークなど、2つ設置されて、内側から外側にどちらを回っても良いものをゲートマークといいます。ゲートマークのうち右舷(スターボ)側をSマーク、反対(ポート)側をPマークと言います。

スタートライン/フィニッシュライン … 実際のヨットレースでは海上に目に見える線が引かれているわけではありません。右手に本部艇、左手にマークが浮いており、それを見通して結ぶ線です。端から見通せばわかりやすいですが、目印の無い海の真ん中でラインを越えているか、いないかを判断するのは、意外と難しいです。

レイライン … 通常の進路ではそこを越えて走ることはない、クローズVMGまたはランニングVMG角度でマークを見通す、コース端を示す目安線です。そこを越えても遠回りなだけで、ルール違反ではないので、あえて他艇を避けたり戦術としてレイラインを越えて走ることもあります。

レグ … コースのマーク間区間のこと。スタートラインから第1マーク(上マーク)までの区間を1レグまたは1上(いちかみ)、上マークからオフセットマークに向かう短い区間を2レグ、またはリーチングレグと言います。

刻々と変化する風は目に見える

ヨットレースは「他艇よりも、少しでも前に出る」競技ですが、その中で特にバーチャルレガッタでも再現されているものが、「風速の変化」と「風向の変化」です。

ブロー … 特に風が強い場所、風のかたまり。バーチャルレガッタでは濃い海面色で再現。レース中の会話で「あっちの遠くにブローがある」「5秒後にブローに入ります」「ブロー来い、ブロー来い、ブロー来い」と最もよく発せられる単語です。

ラル … 特に風が弱い場所。バーチャルレガッタでは薄い海面色で再現。ブローは艇速が上がるので抜けるのも速いですが、ラルはそこで減速して、ひどい場合は止まってなかなか抜け出せない、落とし穴のような場所です。

ブランケット … 略してブランケ。他艇のセールの影響で、風速が弱くなって風向も変わっている場所。敵艇をブランケに入れたり、逃れたりするのが、ヨットレースの大きな攻防の一つ。

各艇の風下にある白い海面がブランケット、風が弱く、乱れている。
上り(クローズ)は先行艇が有利。下り(ランニング)は後続艇が有利。

シフト … 風向きが変化すること。風の「振れ」とも言う。

リフト … クローズで走っている際に風上側にシフトする、より登れる風。そのまま走り続けなければいけないので、身動きが取れず、コース端まで追いつめられるリスクもあるので、気持ちよく高さを稼ぎながら「そろそろ戻ってくれて良いよー」と願う。ランニングで走っている場合は、より落とせる風下側への風向変化。

ヘッダー … クローズで走っている際に風下側にシフトして、進行方向が落ちる風向変化ですが、タックすれば登れるチャンスでもあります。コース端に寄り過ぎて、そろそろタックしたいというタイミングでヘッダーが入ると、歓喜します。また、ブローに向かうために、ヘッダーを我慢して走ることもあります。ランニングで走っている場合は、あまり落とせなくなる風上側への風向変化。

コース中央ではリフトが、コース端ではヘッダーが嬉しい

パフ … 特に円形で扇形に広がる吹き出しブロー。上手くパフの縁を走るとリフトを伴うことが特徴。

さあ、ヨットレースをはじめよう

大変長くなりましたが、バーチャルレガッタに必要な基礎知識のみに絞って、必要な情報を網羅したつもりです。

バーチャルレガッタは十分知識ではないが必要知識

バーチャルには再現・実装されていない用語・知識も多く、十分知識ではありませんが、バーチャルの知識・経験の大部分はリアルセーリングでも役に立つ必要知識です。ぜひ、バーチャルでレース経験を積んで、いつかリアルセーリングにも挑戦して頂けることを願っています。

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