なんやかんやありつつも、健康的な状態で出発当日を迎えた。ネーションズカップの予選は満足できる結果が出たし、厄介な考えごとはほとんど持たず、世界選手権を無事終えて日本に帰ってくることだけを考えていた。
出発前日はしっかり寝て、起きた後はVRIを少しと数独をたしなみ、それから荷物の最終確認を進めていった。昼食後は少し横になり、家を出る時間が迫ってくると緊張感が少し気になってきたので薬をのんでから出発した。
軽食を持っていたほうが道中の安心感が増すので、最寄り駅近くのコンビニでカロリーメイトなどを買い、その日の夕食用におにぎりも買った。電車に乗って羽田空港に向かう途中、葉山マリーナのロゴと名前が入った上着を着ている人に遭遇した。知り合いではなかったけれど少し安心した。
空港に着くと、服が多くて持っていかざるをえなかった2つめのバッグを預けた(昨年の海外遠征は2回ともバックパック1つで行った)。預け荷物用にキャリーケースを買うか迷ったが、家で場所を取るのが嫌だったのと、そこまで容量がなくてもよかったので、昨年の世界選手権でもらったBarcolana仕様のドライバッグで間に合わせた。
保安検査を通過してコンビニでパンや水を買いたした後、ゲート前で1時間半ほど待つことになった。自分が早めに来たうえに、飛行機の出発が少し遅れていた。無心になれるのが好きで最近はまっている数独を1時間近くかけて1問解いた。
搭乗が始まり自分の番が来て列に並ぶと、隣にいた日本人が話しかけてきてくれた。私が男性の1人客だったからだろう。その人も男性の1人客だった。私は自分の行く場所と目的を教え、いろいろ聞いてくれたので自分のこととeセーリングについて話した。こちらも質問をしてみると、転職に伴う休み中で、トルコのイズミルという都市へ1週間ほど観光しにいくということだった。これから乗る飛行機が向かうのはトルコのイスタンブール空港だ。
彼が私にゲームのタイトル(VRI)をもう一度尋ねたときだった。彼の搭乗券を確認した空港スタッフが「この座席番号の方はまだです」といって彼を列から省いてしまった。少し距離が離れてしまった後に会釈をして、彼とはそれきりだ。彼が無事に日本に帰ってきていることを願う。もし私のことを調べてくれていて、このブログにたどり着いていたら、ぜひコメントをお待ちしている(短い出会いでしたが、あなたのおかげで少し緊張がほぐれました。感謝しています)。VRIの名前は中途半端にしか伝えられなかったので、ネットに転がっている私の情報を見つけているという期待はあまり持てない。
昨年の経験からロングフライト中は靴を脱いで過ごしたかったので、Amazonで買った使い捨てスリッパを自信満々に持参していた。ところが、今回利用したターキッシュエアラインズのアメニティが充実していて、座席に用意された小さいバッグの中に使い捨てスリッパがあったのでそれを使うことにした。自分が持ってきた2足のスリッパは向こうのホテルと帰りのフライトで使うことにした。余談だが、勢いで買った10足セットスリッパの残り8足が家で場所を取っているのでどうにかしたい。スリッパが必要な人は私に声をかけてほしい。
家で薬をのんだおかげもあり、私は飛行機をほとんど恐れなかった。日本時間の夜出発なので、基本的には目をつぶって過ごした。
1回目の機内食は離陸後1時間ほどで配られた。メインディッシュの容器からタレがこぼれて手がべたべたになったり、メニューから飲みたい飲み物を選ぶたびに「それはSecond drinkです」と言われて心が折れそうになったりした。
食事の後に行ったトイレで私は血を出した。便器の目の前の壁に手すりが設置されていて、用が終わって立つときに左目付近をぶつけたのだ。痛いと思いながら目の前を見ると、手すりがあり、血しぶきが見えた。終わったかもしれないと思った。
私は大学時代に左目をレスキューボートの後方についている手すりにぶつけて目蓋を切り、縫っている。もしかしてその傷口が開いたのか、と心配してすぐ確認した。その場所から血は流れておらず、血が出た形跡も見当たらなかった。鏡で自分の顔を見ると、他に出血しそうなところは左目のやや下にあった大きめのにきびだけだった。しかしそのにきびもさほど水気を帯びておらず、血を出した雰囲気はなかった。真相は分からないままだ。
自席に戻ってからは、眠りに入るためにアイマスクとイヤホンをした。いつも後ろの席の人に遠慮してリクライニングしてこなかったので、今回こそはしてみようと思ってもやり方がわからなかった。肘掛けの内側にボタンが2つあり、そのどちらかを押せばよさそうなのは予想できるのだが、背中にかける力加減がわからず、しばらくはデフォルトの角度で座っていた。
何回か眠った後、もう一度前側のボタンを押しながら力をかけたらリクライニングできた。後ろ側のボタンは何のボタンなのか、結局わからなかった。
その後は、足元に誰かのスリッパが片方流れてきたくらいのことしか起こらず、眠気が弱くなってからは漫画を読んだりして過ごした。
着陸2時間前くらいに2回目の機内食が出た。素朴な焼きそばがおいしかった。備え付けの端末でバックギャモンをプレイしたり、トイレに行ってトイレットペーパーが2つとも切れたりしているうちにトルコに着いた。
トルコというと私の叔母が一時期住んでいた国だと記憶している。この空港を叔母も昔利用していたのだろうかと物思いにふけりながら、華やかな建物内を歩いた。売店で飲み物やパンを買い小腹を満たすと、少し散歩してからゲート前で待機した。散歩の途中、数字で選ぶ式の自販機でお菓子でも買おうとしたが、3をはじめいくつかの数字が反応しなかったので買うのをやめた。
家を出る前にのんだ薬の効果はとっくに切れていたはずだが、予期不安の症状は出る気配がなかった。次の飛行機も無事に乗ることができ、4時間ほどの快適な空の旅を終えるとそこは極寒の国だった。気温は低いものの屋内はもちろん暖かくしてあり、入国審査を待っている間は上着を脱いでTシャツ1枚だった。トイレに寄ったため最後尾付近で長いこと待った。
今回の入国審査では、どのレーンでも無言で通されている人がおらず、人数のわりにかなり待たされることになった。会話の準備をして少し緊張して並んでいると、何人か前の人の質問が長引き、少し離れたところにあるベンチに連れていかれ、警察にいろいろと聞かれていた。そういう光景を見たのは初めてなので、私はさらに緊張することになった。
自分の番が目前に迫ったとき、さっき連れていかれた人が審査官の前に連れもどされ、短い質疑応答があった後に通過していった。心を乱されつつ自分の番が来ると、典型的な質問が来たので落ちついて返していった。eセーリングについて話すことになり、ここでもゲームタイトルがなかなか相手に伝わらなかった。スペルを書いてくれと言われたので書いていると、後ろに控えていた別の審査官が何やら知っている様子で、結局メモは不要だった。
その審査官が何者だったのか、そのときは少し気になった。だが、審査を終えて預け荷物を拾うと、ホテルに無事たどり着けるだろうかという心配で頭がいっぱいになり、審査官のことはそれ以降このブログを書くまで一度も思いだすことはなかった。思いだしたところで、今そんなことはまったく気にならない。
読者の方々に「その審査官が実はeセーラーの〇〇で、後日試合会場で再会した」というような劇的な展開を期待させてしまっていたら申し訳なく思う。
電車でホテルに向かう前に、まずセブンイレブンで軽食と飲み物を買った。店員の英語を完璧には聞きとれず、分からない質問にYesと答えたら買ったパンを温めてくれた。いらないものを追加で買わされなくてよかった。温めてもらったパンを受け取ってThanksと言ったとき、予習してきたスウェーデン語を使えばよかったと反省した。
近くのベンチで空港の外の寒そうな景色を見ながら、チーズとハムかなんかが挟まった噛みごたえのあるパンを食べた。ホテルまで一人で無事行けるのか不安に思う気持ちは多少あったが、不安が暴走することはなく、穏やかな気持ちと確かな足取りで電車の改札を探して歩いた。
空港はそこまで大きくはないもののきれいだった。しばらく歩くと改札を見つけた。スウェーデンでは改札をクレジットカードで通れるとの事前情報を得ていたので、簡単に通れると思っていたら改札が想像とは違う形をしていて、注意書きもよくわからずどの改札を通ればいいのかわからなかった。そこにいた係員に質問すると、クレジットカードではこのゲートは通れず、チケットを買わないといけないらしかった。
リスニング力が以前より衰えている私は、正しい内容を把握することができなかった。専用のアプリでチケットを買えることは事前に調べていたので、そのアプリでチケットを買うことにした。クレジットカードの登録をしようとしたら、レンタルしていたモバイルWi-Fiの回線が弱いせいでなかなか登録できなかった。空港のフリーWi-Fiに切り替えたらすぐ登録できて、チケットを購入できた。
手に入れたチケットのQRコードを改札にかざしても反応しなかったので、また同じ係員に聞くと「さっきも言ったけど、このチケットだけでは行けない。専用のチケットが〇〇クローナ(スウェーデンの通貨単位)で売ってるからそれを買って」みたいなことを言われた。この係員というのが、無表情でまったく笑顔を見せない人だったのでなんだか追い詰められている気分になった。アプリで買おうとしたがわからなかったのでもう一度同じ係員に詳しく聞いてやっと購入できた。
そのときは英語をしっかり聞き取れてなかったので、最初に買ったチケットはいらないのかと思い損をした気でいたが、あとで調べてみるとそのチケットも必要らしかった。空港の駅を利用するときに追加料金を徴収するシステムはせこい気がするし、ややこしいし、改札をクレジットカード対応にして自動で勘定することくらい簡単そうなのにと思った(他のほとんどの駅はクレジットカードで改札を通れる)。
改札の前で30分近くまごまごした末、13時過ぎに電車に乗ることができた。電車への苦い思い出があったのでどうなるか心配だったが、不安の症状は出なかった。基本的にどこも暑くなかったのがよかったのかもしれない。
スウェーデンの電車はどっしりとした構えで、日本の電車よりもあまり揺れなかった。平日の昼過ぎで乗客は少なく、座席はたくさん空いていた。車内アナウンスから広告、注意書きまで当然のようにスウェーデン語だった。外国語にものすごく興味はあるが、先月からの体調のこともあってあまり予習をしてこられなかったので分からない単語が多く、一つ一つ調べる元気は湧かなかった。それでもnästa(ネスタ)だけはすぐに覚えることができた。繰り返しアナウンスで使われていたのと、nextからの類推が容易だった。
「世界の車窓から」のテーマ曲を脳内再生しながら車窓をぼんやり眺めているうちにホテルの最寄り駅ソルナに着いた。改札を出るときはチケットやカードは不要で、ただ通過するだけでよい。
寄り道をせずにホテルに直行しようとしたら、駅の建物を出てすぐに鳥と遭遇したので、夢中で写真を撮ることになった。頭部がカラスに似ているが体が白黒で、青っぽい部分もあるその鳥を私はあまり見たことがなかった。あとで調べるとカササギという名前らしかった。
カササギがどこかへ行った後、地図を見ながらホテルへと向かった。上着の用意は万端で、脚は冬の海を素肌で乗り越えられる程度の寒さ耐性があるので、体の大部分は問題なかった。
問題は足先だった。今年3月の寒い函館で雪山以外は大丈夫だったので、防寒仕様の靴はわざわざ用意せず、通気性抜群のランニングシューズを履いていった。地面に少し残った雪の冷たさと足元に吹く風の冷たさで、私の無防備な足先はみるみる冷たくなっていった。足先に寒さ耐性はなく、冬の海ではウェットソックスを履くようにしている。そんなことを忘れ、少し厚手の靴下一枚で乗りきれると愚かにも思っていた。
足が凍えきる前になんとかホテルに着き、Albertoにチェックインを手伝ってもらった。ここでもホテルのお姉さんについThanksと言ってしまった。
自分より早く着いたのはKazukiさんとKazukiさん母だけで、他のファイナリストはいなかった。Kazukiさんと顔を合わせるのは明日にして、部屋に着くと荷物の整理をして、シャワーを浴びた。そしてストレッチと写真の整理をしていたら17時くらいになっていた。日はとうに落ちていて、外は暗かった。
「足寒い問題」があったので、近くにあるショッピングモールで靴を買いたいと思ったが、まずは眠くてしかたがないので眠ることにした。ショッピングモールが21時には閉まるとのことだったので2時間だけ寝ようと思い、アラームをセットした。掛け布団を2枚かけ、エアコンの設定を+2度にして目を閉じた。
目が覚めてスマホを見たら、0時半だった。汗を少しかいていた。アラームを設定して枕元に置いたはずのスマホは、右手の位置に移動していてアラームが止まっていた。日本時間で考えるとちょうど0時から朝8時ごろまで寝ていたことになる。時差、万歳!
日付が変わったので今回はここで止める。
次回は、この万歳の後からスウェーデン滞在2日目終わりまでの出来事を書いていく。
最後に、この移動の間に撮影した写真や動画を共有したい。
(その2へ続く)
スウェーデン遠征記その2 ~皆で遠足編~ (KG-R) | バーチャルレガッタ講座 – ゲームウィキ.jp
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