ゲームウィキがサービス終了するという突然のニュース。Sohei NIPPONさんがおもに作ってくださったこのバーチャルレガッタ講座は、他のサイトにまるっと移行できそうだということで安心ですが、長年親しんできたサイトなので寂しいです。
昔はブログが好きで、よく思いついたことを気ままに投稿していましたが、ここしばらくは大会のときだけ書くようになっていました。今回は、ネーションズカップで初優勝というかっこうのネタがあり、ゲームウィキも終わっちゃうというタイミングなので、これはもう書くしかありません。
ネーションズカップ2025にて日本が優勝したことは、日本中、そして世界中で周知の事実となったわけですが、まだ知らないという方のために、バルクヘッドマガジンの記事を紹介しておきます。
日本、ついに世界の頂点へ!eSailingネーションズカップ制覇世界のヨットレース、セーリングニュース & コラム
本記事のタイトルで、初優勝の裏話、と大きく出てみたものの、そこまで皆さんが気になるような話ではないかもしれません。
本当は黙ったままのほうがかっこよさそうだけど、未来の日本チームのために書きさらしてみようかなと思ったことが2つあります。
1)決勝当日の昼、JVRICのDiscordで長文を投稿した理由とその効果
2)思い描いていた優勝決定の場面
それでは、ひとつずつ暴露していきましょう。
1)決勝当日の昼、JVRICのDiscordで長文を投稿した理由とその効果
ぼくはここ1、2年、よりよいチームを作り、結果につなげることについて関心があり、あらゆるコンテンツから知識を吸収しつつ(2025年に読んだ本とか見たアニメとか – KG-Rの音)、大学ヨット部とJVRICの2つのコミュニティで実践経験を積みかさねてきました。
「チームや組織をどう運営するのがよいか」という問いを持ち、実際にどういう手法があるのかをある程度学んでいくと、ほぼすべての物語が教材となります。チームや組織の運営においては、1対1の人間関係や、集団の人間関係をどうよくしていくかというのが、とても重要になってきます。人間関係とはつまり、どういうコミュニケーションをする関係なのか、ということだと思います。アニメや映画などの映像作品の場合は特に、会話のない物語はほとんど存在せず、規模の大小はあるにしてもチームや組織の登場しない物語もまた、ほとんど存在しません。
部活は生きているチームであり、現在進行形の物語です。生きているチームに関わることが、やはり一番勉強になりました。部活にはほぼ毎週参加し、2025年は自分のヨット部生活史上、おそらく一番充実していて楽しい1年でした。
一方、ネーションズカップの準備についていえば、2025年中盤までは時間に余裕があったため積極的に練習を呼びかけられることもできたのですが、ぼくの生活事情の変化により、9月以降は夜の練習に参加することが難しくなりました。2025年6~8月に計6回実施したJVRIC会議も中途半端な形でストップしました。ぼくが9月以降にやっていたことといえば、チームレース用botの管理くらいでした。
11月末にネーションズカップ2025が開幕してからも、時間が合うときだけ試合に出る人になっていました。12月中、何度かチームレース練習に参加する機会があり、そのときにチームレースが超絶下手になっていることに気づきました。Kチャンピオンシップのグランドファイナルで大敗したことも重なり、フリートレースも含めてVRIが下手になっていることを知りました。プレイ時間がしばらく激減していたので、当然の結果でした。
ネーションズカップ決勝までに間に合わせなきゃ、とあせった僕は、12月後半から今年1月いっぱいは、自由時間をなるべくVRIに捧げました。仕事から帰ってきた後の夜中や、空いてる午前中を使って、参加できるチームレース練習には参加しました。チームレースができなそうなときは緑レースで基礎練習をしました。
でも、自分の練習以上のことはほとんどできませんでした。ぼくが本当にやりたかったのは、チームの結束力を強くするような何かです。12月以降、JVRICでのチームレース練習に混ざってボイスチャット(ボイチャ)に参加したとき、ぼくは黙りがちになる自分を発見しました。みんな、ぼく以上にたくさん練習してきて、仲も前よりいい感じになっていて、そこにぽっと出のぼくが割りこむのは気が引けたのです。このまま決勝を迎えてはまずいと思いました。ネーションズカップのグループステージや3位決定戦のときのボイチャの雰囲気も、優勝を目指すチームとしては何かが足りないように感じました。
1月終盤の練習中のボイチャでは、ぼくは気兼ねなく発言できるようになりましたが、ぼくが饒舌に戻っただけでは、前回大会までとそんなに変わりません。
チームの雰囲気や、メンバーの心境を意識しながらボイチャを聞いているなかで、ぼくが特に気になった言葉がありました。
「怖い」
特にMineeさんが口に出していた印象がありますが、もし自分がミスをして負けたら怖い、という感情は、ネーションズカップに参加してきた人なら誰もが感じたことがあるかと思います。かくいうぼくも、そうした不安がゼロではありませんでした。
だから、ぼくは「怖い」をチームから消したいと思いました。試合中、誰かが「怖い」と言ってしまえば、「怖がらないで大丈夫ですよ」などと言ってみたところで、その人の「怖い」は取り除けないでしょうし、「怖い」が他のメンバーにも伝播していくかもしれません。
そこで「怖い」の予防策として、決勝当日の昼に、次のような長文を投稿することにしました。
おはようございます!
ネーションズカップ決勝当日がやってきましたね。
日本VRIクラブ(JVRIC)の創設メンバーの一員として、長年このコミュニティに携わってきた僕から、皆さんに共有しておきたいことを書かせていただきます。
JVRICは、そもそも何のために生まれたのか。
僕も日頃はそんなこと気にしてないのですが、その目的は明確です。
JVRICは、ネーションズカップのために生まれ、そして存在しています。ネーションズカップのためだけではないかもしれませんが、それが一番大きな目的だと思っています(尾形さん、Gackyさん、補足あればお願いします)。
最初は、いかにネーションズカップに参加する体制を整えるか、という段階から始まりました。その段階もひとすじ縄ではいかなかったですが、初期メンバーやeセーリング委員会で協力しあい、すぐに乗りこえることができました。
そしてその後、いかに強いチームを作るか、という段階に進むわけですが、この段階の攻略がとても難しいものであることは、これまでの経験から皆さんもお分かりかと思います。僕もこれまで、日本がチームとしてどれだけ強くなれるかを考えて、普及活動・広報活動を続け、選手として結果を残すことにも力を尽くしてきました。もちろん僕以外にも、同じように考えて活動されてきた方々がいます。僕たちのそうした活動は、ナショナルチームの強さ(結果)にすぐには反映されませんでした。
しかし、約6年もの歳月をかけて、ついに伏線回収のときが来たようです。フリートレースで世界のトップと戦える人がここ2、3年で徐々に増え、そうした若手のトップランカーたちがチームレースにもめちゃめちゃ強くなったのがこの1年のように思います。本当にありがたいかぎりです。今年の優勝は、NT2025のメンバーだけでなく、これまでJVRICに関わってきたすべての方たちの手で掴みとるものだというイメージをして、僕は今夜の試合を勝ちにいきます。
KG-R, #ネーションズカップ 2026/02/01 12:17 の投稿
最高の一夜にしましょう!
文章を実際に考えたのは当日でしたが、こういう文章を決勝当日に投稿しようと考えついたのは、決勝の数日前でした。
これまでの道のりや目的を丁寧に振り返って伝えることや、自分の意気込みに焦点をあてて書くことは「空気で人を動かす」などの本から学び、勝負事に取り組むチームの士気を上げるための言葉の重要性は「キングダム」などから学びました。
ちなみに、こうした文章を書くことを思いついたときに頭の中で繰りかえし流れていたのは、次のフレーズでした。
今日勝つために生まれてきた
晋平太 UMB2010 R-指定 戦、または「CHECK YOUR MIC」の歌詞より
今日勝つために立ち上がった
今日勝つために負け続けた
おれが晋平太 それが分かるか?
ぼくが送った文章がどれだけ効果があったのかは知るよしもありませんが、結果として決勝最中のボイチャは、これまでのネーションズカップのなかで一番空気がよかった気がしました。なんというか、あたたかくて、頼もしい感じがあって、1本取られても例年のようにそこまで暗い雰囲気にならなかったように思います。
2)思い描いていた優勝決定の場面
1つめが思ったより長くなったので、こちらはサクッといきます。
2025年12月、グループステージで(ぼく抜きで)フランスに勝ち、日本の決勝進出が現実味を帯びてきた頃、ぼくは優勝が決まる瞬間のことを想像しはじめました。
ぼくの出るレースで優勝を決める。
そしてそのレースで、ぼくが優勝を確定させる艇になる。
それは引き寄せの法則というよりも、ただの子どもじみたわがままでした。
「6年連続でネーションズカップに出場してきたぼくが決勝点を決めるという展開こそ、ご都合主義的な物語としては一番期待される筋書きだ」
このような主人公気取りのわがままを実現させるために、練習に取り組んでいました。練習中、うまくいかなかったり心が乱れたりしたときも、この自分勝手な願望を思いだすだけで、よだれが出てきて、落ちつきを取りもどすことができました。
決勝の最中も、そればっかりを考えていました。そのためか、ミスをしてもあまり動揺しませんでした(すべてが終わった後にめちゃめちゃ反省しました)。
あと1勝で優勝という状態で迎えたR7。Offshore 4v4 の最終レグで、僕が勝敗を決めるポジションになったのに相手を取り逃がしたときも、「そう簡単にわがままは実現しない」と、やけに冷静だったのを覚えています。
そしてR8のILCA 5v5。スタートで最低限の仕事をした後に、タック先を見ずとっさにノーベアタックをかまして1ペナルティ。1マークでスタボアプローチの相手をよけきれずにもう1ペナルティ。自艇の前にイタリア艇が3艇いる状態の4マークで、相手のインに飛びこんで2艇抜かすと、仲間の援護があって5マーク(2上マーク)には4位に浮上。その後6マークで自艇がマークトラップをすることで、日本の 1-2-3 が確定。
序盤のミスはもちろんわざとじゃないですが、あまりにもできすぎているレース展開に、思わずぼくはこう思いました。
「ヨットレースが怖い」
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