eセーリング学生王者決定戦(EGOK)とはいったい誰のためにあるのか、と聞かれれば、学生のためにある、と答えます。どんな学生のためにあるのか、と聞かれれば、少しでもセーリングがうまくなるためにeセーリングを利用している学生のためにある、と答えます。……というのは、大きく間違ってはないですが、完全な答えでもありません。
私が賞金を用意してまでEGOKを開催しようとするのは、全セーラーのためです。EGOKは巡りめぐって初心者からトップランカーまでのすべてのセーラーのためになる、と素人ながら考えています。私の考え(≒机上の空論)はこうです。
まず、VRIのプレイ人口が多い大学生に向けたeセーリング大会を定着させる。すると、VRIを通して学生のセーリング力が向上し、大学始めの人と経験者の差が縮まる。すると、リアルレースの難易度が上がり、リアルセーリングにおいて学生全体のレベルが上がる。すると、学生と社会人の差が縮まり、日本セーラーのレベルが全体的に上がったり、ますますセーリング界が盛り上がったりする。トップ選手の活躍とセーリング界の盛り上がりによってセーリングを新しく始める人が増えたり、続ける人が増えたりする。競技人口が増えれば、大艇団でレースができて楽しい。楽しくレースできる環境があればうまくなりたい人が増えて、好循環が始まる。
この流れがスルスルと実現してくれればいいのですが、思ったとおりに事が運ばないのが世の理です。特に流れの最初、「大学生に向けたeセーリング大会を定着させる」を実行するだけで数年はかかるか、あるいは定着と呼べるまで一生発展しないかもしれません。
ここで私の思う「定着」とは、大学ヨット部の7~9割が大会に参加するような状況になることを指します。これが難しい目標値なのは、これまでの雰囲気でわかっています。
eセーリングに打ちこむ人は、大学始めでセーリングに意欲的かつゲーム文化になじみある人が多く、そういう特徴を持った学生セーラーはおそらくそんなに多くいません。大学始めでそこそこがんばる人やゲーム文化へのなじみが薄い人、高校以前からヨットに乗ってた人などのほうが断然多い、という印象があります。この傾向の壁を壊すのが難しいというのがまずひとつ。
定着させるためのもうひとつの難点は、eセーリングの活用ならびに大会参加が任意であること、そして今までにない活動であること、だと思います。ほぼすべてのヨット部員が、ヨットに乗りたくてヨット部に入部したはずです。私もそうでした。そして入部してしまえば、気分が乗らない日でも活動日ならヨットに乗らなくちゃいけないし、やる気があろうとなかろうと大会への参加はほぼ強制です。それが活動内容として昔から定まっているからです。もし昔からeセーリングの伝統があるなら、先輩から言われるがまま練習したり大会に参加したりすることへの抵抗はないでしょう。しかし、そんな伝統はありません。新しいものが生まれたとき、慣性の法則的な困難がつきまとうのはどうしようもないので、ゆっくり動きだすしかないですね。
机上の空論がすべて叶うことはないにしても、リアルセーリングにおける学生全体のレベルが上がるところまでは進んでほしいと個人的には思います。
私の小さな願いとして、インカレで趣のないワンサイドゲームを繰りかえしつづけてほしくない、というのがあります。たしかに経験者が多い強豪チーム同士はおもしろくてたまらない競争をしていることでしょう。しかし、未経験者が多く環境に恵まれていないチームなどは、その影で後ろを走りつづけています。経験者と未経験者のワンサイドゲームを、楽しめる人はいるのでしょうか。
1レースごとに全体の順位が激しく変わる大会を、私は見てみたいです。そのほうが経験者もワクワクするだろうし未経験者もワクワクするだろうし、レース結果を待っている人たちもワクワクするでしょう。
最後に、関東から出られなかったセーラー代表として、現役時代に言いたかったことを書きのこします。
「全日本インカレに出場してまったく前を走らないセーラーよりも全然速くて前を走れる自信のある地方予選落ちセーラーがたくさんいるんだぞ。どっちがヨットレースうまいのか、まずはeセーリングで白黒はっきりつけようぜ。いっそのことeセーリングをフル活用してお互いにセーリングうまくなって、全日本インカレで一緒にひと波乱おこそうぜ」
最後の最後に、EGOK企画者として、もうひと言。
「EGOKに出場することには、出場しない人やチームに対して数十艇身分ゲインするくらいの価値がきっとあるよ!」
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